2008年5月1日木曜日

景気循環と経済成長

 マクロ経済活動は、ある程度規則的な拡張と収縮を繰り返している。。このようなマクロ経済活動の動きを景気循環あるいは景気変動と呼ぶ。
 景気循環は、四つの局面に分けられる。
 1、不況から経済活動が上昇する回復。
 2、経済の拡大が続き、生産、投資、雇用が増える好況、
 3、需要に対して生産が過剰となり、生産が減退して、投資・雇用の縮小が始まる後退(それが急激に表れると恐慌)、
 4、経済活動が沈滞に陥り、底に達する不況の四つである。
 この周期的な循環運動は、資本主義の発展とともに十九世紀初め頃から約十年の周期で起こるようになった。但し、第二世界大戦後はそれまでのような深刻な不況を表れていない。景気循環の幅が小さくなることは、望ましい。これを実現するのは、政府のマクロ経済政策の大きな目標である。
 これに対して、経済成長は、国民経済全体に分ける経済活動の規模の拡大を意味する。経済成長は、国内総生産の増加という形で数量化される。国内総生産の一定期間の増加率を、経済成長率と呼ぶ。高い成長率の達成も重要な政策目標である。
 マクロ経済が高い率で成長するには、家計の貯蓄率が高く、企業の投資活動が活発に行われること、また、技術革新が積極的になされることなどが必要がある。

ハクシャー=オリーン・モデルにおける仮定

10の仮定
 1、対象国数、生産要素数、商品数 2種類の生産要素があって、2種類の商品を生産している二つ国を想定しています。また、生産要素賦存比率は二つの国でことなるという仮定を設けています。
 2、生産技術 2国において生産技術は同一です。別の言葉で言えば、生産関数は2国で同一であるということです。
 3、生産において規模に関して収穫一定 資本と労働の両方の投入量が同じ割合で変化したならば、生産量も同じ割合で変化するという仮定です。たとえば、資本と労働の両方の投入量が2倍になれば、生産量も2倍になるということです。
 4、生産にわける要素集約度 生産にあたって必要となる資本と労働の割合は、二つの商品の間で異なると考えています。たとえば、衣類は労働を比較的に多く必要とするのに対し、機械は資本を比較的に多く必要とするといった具合です。要素集約度の順序は、生産要素の相対価格がどのようなものであっても同じであるという仮定を設けています。
 5、不完全特化 二つのどちらの国も一つに商品に生産を完全特化することはないと仮定しています。この仮定は、両国の経済規模が比較的に似ているということを意味しています。
 6、完全競争 二つの商品の市場と二つの生産要素の市場においては完全競争が行われていると想定します。完全競争市場では、すべての需要者と供給者は価格に対して影響力はなく、価格を与えられたものとして行動するプライス・テーカーになります。
 7、生産要素の移動 生産要素は一国内では産業間を自由に移動することができますが、国際間では移動は不可能であるという仮定を設けています。
 8、2国の需要パターン 消費者の好みを反映する需要パターンは二国において同一である想定します。
 9、自由貿易 2国間で行われる貿易には関税とか輸入数量割当などの貿易の障壁は存在しません。
10、輸送費用 輸送費用はゼロという想定です。この仮定と9の自由貿易という仮定があることによって、貿易は商品価格が2国で絶対的に等しくなることを保証します。

2008年4月30日水曜日

ヘクシャー=オリーン・モデル

貿易が発生するのは、貿易前の商品間の相対価格が貿易に参加する国々で異なるからだということはすでに確認しました。また、貿易前の国内価格は、各々の国における需要と供給によって決まることもみました。つまり、国々の間で需要と供給の状況が異なることから貿易は発生するのです。
 前章では、2国間で供給条件が同じでも、消費者の好みが違うことによって両国間で貿易が生じることが分かりました。反対に、消費者の好みが同じでも、供給条件が2国間で異なれば貿易が起こります。
 供給条件が2国間で異なる理由としては、生産技術の違いと生産要素の賦存量の違いが挙げられます。生産技術が異なることによって貿易が発生することは、すでに機会費用が一定に場合と上昇する場合で検討しました。そこで本章では、2国間で存在する生産要素の量に違いが貿易の原因となる場合を検討します。
 貿易に決定要因として2国間での生産要素の賦存量の違いに最初に注目したのは、スウェーデンの経済学者のハクシャーとオリーンでした。前章から新古典派の貿易理論を説明していますが、ハクシャーとオリーンの理論が構築さてたことで新古典派の貿易理論は頂点に達したと考えられます。
 本章では、第一節でハクシャー=オリーンのモデルの前提条件を検討します。次に第二節でハクシャー=オリーンのモデルから導かれる諸定理について説明します。具体的には、生産要素賦存量と生産パターンの関係を考察したリプチンキーの定理、生産要素賦存量と貿易パターンとの関係を明らかにしたハクシャー=オリーンの定理、商品価格と生産要素価格の関係についてのストルパー=サムエルソンの定理、そして最後に、貿易が行われることで生産要素価格は2国間で絶対的に等しくなることを示した要素価格均等化定理を説明します。

現実の成長率

 ところで、現実の成長率が必ずしも適正成長率に等しくならないとすれば、どのような調整メカニズムが働くのだろうか。たとえば、現実の成長率が適正成長率を下回る場合には、資本ストックを完全操業させると財市場で超過供給になり、意図せざる在庫が発生する。このとき、現実の資本ストックは必要資本係数から求められる適正な値からみて過剰隣、投資意欲は減少する。その需要に与える効果は、乗数過程を経てさらに現実の成長率を低下させるため、現実の成長率は適正成長率課か下方へ益々離れていく。 
 逆に、財市場が超過需要になり、意図せざる在庫の減少が生じている局面では、現実の成長率が適正成長率を上回る。このとき、投資意欲が刺激され、ますます現実の成長率が上昇していく。すなわち、現実の成長率がいったん適正成長率と一致しなくなると、累積的にその差が拡大していく。このような不安定な性質は、ナイフの刃の現象と呼ばれる。ハロッド・ドーマー理論の特徴は、その不安定性にある。だからこそ、財政金融政策を適切に発動して、現実の成長率を適正成長率に一致させることが求められる。

金融政策の効果

 金融政策では、貨幣供給を操作することで金利を動かし、投資需要に影響を与えることができる。金融緩和政策で金利が低下すれば、投資需要が増加し、gdp需要も増加するから、現実の成長率は上昇する。逆に、金融引き締め政策を採用すれば、金利が上昇して、投資需要を抑制するから、現実の成長率も低下する。

財政政策の効果

 では、財政政策は、適正成長率にどのように影響するだろうか。まず、政府支出率(政府支出の対gdp比率)拡大の効果からみておこう。政府支出率gの拡大によって適正成長率は低下する。逆に、税率(税負担の対gdp比率)の上昇によって、適正成長率は上昇する。
 これらの結果の直感的な理由は、税率の上昇や政府支出率の減少が乗数の値を小さくするからである。したがって、投資の拡大による生産能力の伸びに見合った需要を創出するためには、投資をより速い速度で増加させて、所得を増加させる必要がある。すなわち、乗数値が小さいほど、成長率を高くしないと、資本の完全操業は維持できない。したがって、政府の収支を黒字にして、民間部門に資源を還元することで、適正な成長率も高くなる。
 その結果、財政赤字が拡大すれば、適正成長率は低下し、逆に、財政黒字が拡大すれば、適正成長率は上昇する。戦後のわが国の高度成長期には、財政収支は均衡し、gdpの拡大による自然増収は減税という形で民間部門に還元されていた。これは、適正成長率を上昇させて、供給面から経済成長を刺激する効果をもったといえよう。
 ところで、ここまでの定式化では、政府支出の拡大は需要を刺激するのみで、生産能力は刺激しないと想定されていた。しかし、現実には公共投資という形で、政府支出もマクロ的な生産能力の拡大に貢献している。この点を考慮して、政府支出のうちでgdpの割合だけ公共投資が行われて、民間投資と同じだけの生産能力拡大効果があると想定しよう。このとき、適正成長率はygの分だけ大きくなる。