2008年4月30日水曜日

財政政策の効果

 では、財政政策は、適正成長率にどのように影響するだろうか。まず、政府支出率(政府支出の対gdp比率)拡大の効果からみておこう。政府支出率gの拡大によって適正成長率は低下する。逆に、税率(税負担の対gdp比率)の上昇によって、適正成長率は上昇する。
 これらの結果の直感的な理由は、税率の上昇や政府支出率の減少が乗数の値を小さくするからである。したがって、投資の拡大による生産能力の伸びに見合った需要を創出するためには、投資をより速い速度で増加させて、所得を増加させる必要がある。すなわち、乗数値が小さいほど、成長率を高くしないと、資本の完全操業は維持できない。したがって、政府の収支を黒字にして、民間部門に資源を還元することで、適正な成長率も高くなる。
 その結果、財政赤字が拡大すれば、適正成長率は低下し、逆に、財政黒字が拡大すれば、適正成長率は上昇する。戦後のわが国の高度成長期には、財政収支は均衡し、gdpの拡大による自然増収は減税という形で民間部門に還元されていた。これは、適正成長率を上昇させて、供給面から経済成長を刺激する効果をもったといえよう。
 ところで、ここまでの定式化では、政府支出の拡大は需要を刺激するのみで、生産能力は刺激しないと想定されていた。しかし、現実には公共投資という形で、政府支出もマクロ的な生産能力の拡大に貢献している。この点を考慮して、政府支出のうちでgdpの割合だけ公共投資が行われて、民間投資と同じだけの生産能力拡大効果があると想定しよう。このとき、適正成長率はygの分だけ大きくなる。

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