2008年4月30日水曜日

現実の成長率

 ところで、現実の成長率が必ずしも適正成長率に等しくならないとすれば、どのような調整メカニズムが働くのだろうか。たとえば、現実の成長率が適正成長率を下回る場合には、資本ストックを完全操業させると財市場で超過供給になり、意図せざる在庫が発生する。このとき、現実の資本ストックは必要資本係数から求められる適正な値からみて過剰隣、投資意欲は減少する。その需要に与える効果は、乗数過程を経てさらに現実の成長率を低下させるため、現実の成長率は適正成長率課か下方へ益々離れていく。 
 逆に、財市場が超過需要になり、意図せざる在庫の減少が生じている局面では、現実の成長率が適正成長率を上回る。このとき、投資意欲が刺激され、ますます現実の成長率が上昇していく。すなわち、現実の成長率がいったん適正成長率と一致しなくなると、累積的にその差が拡大していく。このような不安定な性質は、ナイフの刃の現象と呼ばれる。ハロッド・ドーマー理論の特徴は、その不安定性にある。だからこそ、財政金融政策を適切に発動して、現実の成長率を適正成長率に一致させることが求められる。

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